~只今、全面改訂中~

こんにちは。

今回ご紹介しますのは、1937年文部省刊行の「国体の本義」です。

戦後、GHQにより真っ先に発禁処分になったことでも知られますが、

実はコレ、「近代科学を擁護した」ものではないか、とのことです。

以下、『大日本史』(山内昌之・佐藤優、2017年)第5章「満州事変と天皇機関説」を参考にさせて頂きました。

「国体の本義」とは

wikipediaによりますと、

1937年(昭和12年)に、「日本とはどのような国か」を明らかにしようとするために、当時の文部省が学者たちを結集して編纂した書物である。神勅や万世一系が冒頭で強調されており、国体明徴運動の理論的な意味づけとなった。

とあります。

この刊行物が発刊された時期というのは、1935年の「天皇機関説事件」から「国体明徴運動」がおきた時期です。

そのため、「国体明徴運動」を受けての「国体の本義」という文脈で書かれることが多いです。

実際に、

「大日本帝国は、万世一系の天皇皇祖の神勅を奉じて永遠にこれを統治し給ふ。これ、我が万古不易の国体である」

という冒頭から、「天皇の神格化」を讚える内容、と想像つきます。

しかし。

この刊行物の真の狙いは違うところにあったのではないか、と指摘するのが佐藤優先生です。

「国体」と科学

国体明徴運動が進みすぎて、西洋近代が全否定されるとどうなるか

これは当時の識者たちや、文部省も懸念しておりました。

そもそも近代科学を否定してしまっては、最新兵器も作れません。

1935年に亡くなった永田鉄山あたりはこのあたりをよく認識ししていて、日本の工業力の貧弱さを嘆き、「高度な科学技術に支えられた国防体制」建設を目指しておりました。

永田鉄山
なんせ、1932年の時点で戦車の数はアメリカ1000両、ソ連500両、日本40両。

「国体の本義」はGHQにより真っ先に発禁処分になったことから、「天皇を神格化する危険な書」というイメージがありましたが、

よく内容を読むと、

「西洋近代の科学技術を踏まえた上で、それを乗り越えていくという枠組みを提示すること」

だそうです。

ちょっと、内容が読みたくなりましたね…。

ちなみに、詳説日本史研究では、

その後、教学局を設置して「臣民の道」を刊行(1941年)して国民刺創の教化、

天皇の神格化につとめ、同年には「国民精神総動員運動」をおこして国体観念の国民への浸透と、軍国主義・国家主義の鼓吹に力を注いだ…

と書かれていることから、やはり国体明徴運動と同じ文脈で書かれております。

さらに、1940年に設置された「内閣情報局」により、言論報道機関、出版物、映画、演劇などに対する検閲が強化され、言論の自由は大幅に制約されるに至った…

とありますが、

「自由主義」的なものの対極として「国体の本義」をあげて良いものかは、

やはり、「日本国家の真髄」(佐藤優、2014年、扶桑社)を読まないとダメかなーと思いました。

いずれにしても、試験勉強的には「国体の本義」=「国体明徴運動の流れによるもの」ですが、実際は、「近代科学の擁護」と頭に入れておきましょう。

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