こんにちは。
今回ご紹介しますのは、「満州建国の真実」第8章「十五年戦争という誤謬」より。
『それでも日本人は戦争を選んだ』で小林秀雄賞を受賞した「加藤陽子先生への反論」です。
「加藤陽子先生」といえば、東大教授にして、山川出版社の高校教科書も執筆。『それでも日本人は戦争を選んだ』が「小林秀雄賞」を受賞したほか、『戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗』も「紀伊國屋じんぶん大賞」を受賞し、いずれもベストセラーとなりました。
・・・と書きますと、非の打ちどころのないような先生に聞こえるのですが、秦郁彦先生をはじめ、「これぞ左翼的自虐史観だ」と真っ向から否定する学者、研究家もいるようです。
(ちなみに加藤先生は「学術会議」会員への任命を菅首相に拒否されてもおります。)
鈴木荘一先生も加藤陽子先生を糾弾する歴史家の1人なわけですが、では、具体的にどこが「ダメ」だと言うのでしょうか。
①満州事変と日中戦争をつなぎ合わせ、「十五年戦争」論を定説に押し上げた
満州事変から終戦までを「十五年戦争」として「地続き」で考える授業が小学校で行なわれているらしいです。(産経新聞:平成30年2月4日)
しかし、鈴木先生いわく、そもそも「満州事変」と「日中戦争」は別物であり、満州事変から太平洋戦争は「地続きではない」という立場をとります。
一方、加藤陽子先生は「満州事変」と「日中戦争」を「地続き」ととる立場。
「日中戦争の根幹にあったのは、1931年9月18日、関東軍参謀によって謀略として起こされた満州事変であった」
というのです。
そもそも「十五年戦争」という言葉は、昭和31年、評論家の鶴見俊輔氏が最初に使用した言葉で、東京裁判史観ですら、「日中戦争から太平洋戦争」までを指していることからもわかるように、当時としては少数意見でした。
これを「定説」に押し上げたのが加藤陽子先生と言うのです。
もっとも全く無関係とは言い切れないとも思うのですがね。
でも、それを言い出すと、やはり石原莞爾が言うように、「黒船来航」から話さなくてはいけなくなるでしょうかね・・・。
しかし、これにはさらにややこしいことがありまして、中国も元々「日中戦争から日本に抵抗」としていたのですが、最近になって「満州事変から日本に抵抗」と6年繰り上げているそうです。
そうすると、加藤陽子先生が中国の顔色を窺って、「十五年戦争」という言葉を植えつけているのではないか、という疑惑が生じてくるのかとも思うのですが、どうなんでしょう。
(※今上天皇も「十五年戦争」というニュアンスを用いたそうです。僕自身は満州事変と日中戦争は関連がない、とは言えないし、そんなに関連性が重要なのか・・・と思ってしまうのですが・・・。近年では第1次世界大戦と第2次世界大戦も一緒に考える提言もされていると聞きますが・・・。)
【満州事変と日中戦争は別物か?】
1931.9.18 満州事変勃発
1933.5.31 塘沽停戦協定
1937.7.7 盧溝橋事件
②「主語=日本人全員」とすることで自虐史観を植えつけた
東京裁判史観では、「日本の軍閥指導者」が「支那事変から太平洋戦争」を行なったことを咎める内容でしたが、加藤先生は、これをいつの間にか「日本人全員が」と主語を組み替えている、という点。
鈴木先生はこれを「東京裁判史観」とは別の「自虐史観」として糾弾しております。
そして、本来、
「それでも『日本人』は、日清戦争、日露戦争、第1次世界大戦、満州事変、太平洋戦争を選んだ」
のではなく、
「それでも伊藤博文は日露戦争を選んだ」
「それでも大隈重信は第1次世界大戦を選んだ」
「それでも石原莞爾は満州事変を選んだ」
「それでも東条英機は太平洋戦争を選んだ」
であろう、と言うのです。
鈴木先生の言っていることはよくわかります。
すべて「日本人」としてしまうような大雑把なものでは、歴史の意味がなくなってしまうのではないかと思いますし。
加藤先生の言っていることは、総体として日本人の「大多数」が「戦争を支持した、戦争に熱狂した」と言うことを言っているのではないかなぁ・・・と思うのですが、結構、これは難しい問題ですね・・・。
「それでもドイツ人はヒトラーを支持した」
「それでもアメリカ人は原爆投下を支持した」
「それでも中国人は文化大革命を支持した」
etc・・・
と、言い出したらキリがないんじゃないでしょうか。
新聞などが戦争を煽ったことは確かとはいえ、それならそれで「新聞に熱狂した」とだけすれば良いのではないか、とも思います。
もっとも、「それでも日本人は戦争を選んだ」というのは題名としてインパクト十分ですし、広告効果を狙ったものではないか・・・と思うのですが、どうなんでしょう。
是非、一読してみたいと思います。
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