~只今、全面改訂中~

こんにちは。

今回ご紹介しますのは、「汪兆銘工作」の続きと「第3次近衛声明」についてです。(前回はコチラ)

汪兆銘への接触は1938年7月頃には始められており、11月の「日華協議記録」まで漕ぎ付けました。

その流れを汲んで「第2次近衛声明」が発出され、「東亜新秩序」が呼びかけられたのでしたが、蒋介石はこれに呼応しなかったため、ひきつづき「汪兆銘工作」が行なわれます。

汪兆銘は影佐大佐らの工作もあり、重慶を脱出しましたが、汪兆銘に呼応するものはいませんでした。

そんな中で出された「第3次近衛声明」でしたが、ここには上述の「日華協議記録」で決められた「2年以内の撤兵」について触れていないことに汪兆銘は驚きます。

(これにはソ連のスパイであった尾崎秀実が文言を消した、という説があるようです。)

以下、「総力戦のなかの日本政治」などを参考にさせて頂きました。

【年表】1938年12月

1938年日本中国
7.五相会議
「時局に伴う対支戦略」
蒋介石失脚のため、「支那一流の人物(=汪兆銘)」起用のシナリオ
高宗武らが来日して板垣陸相と会見
11.3第2次近衛声明
11.20日華協議記録
12.6昭和十三年秋季以降対支処理方策(※1)
12.18汪兆銘、重慶脱出(※2)
12.22第3次近衛声明(※3)
「近衛三原則」発表
(善隣友好、共同防共、経済提携)
日華協議記録に示された和平条件追認
12.29汪兆銘、蒋介石に和平交渉を促すが拒否され、逆に党籍剥奪
1.5近衛文麿、突然辞任(※4)

(※1)昭和十三年秋季以降対支処理方策

武漢・広東攻略により日本は中国の主要都市を制圧しました。

しかし、中国は抗戦をやめる気がありません。

毛沢東は、「今後は日本側が戦略的守勢、中国側の戦略的反攻の時期となる」と読み、そのための準備をする戦略をとります。

事実、帝国陸軍の動員力も限界に達しており、陸軍は、

「重大な必要性がない限り占領地域を拡大せず、これを治安地域・作戦地域とに分け、後者では抗日勢力の壊滅をはかるが、不用意な戦線拡大を行なわない」

と方策を立てていました。

(※2)汪兆銘、重慶脱出

蒋介石らに和平の意志がないため、日本は汪兆銘を交渉相手とすべく「汪兆銘工作」を行っておりました。

元々、汪兆銘の国民党内での地位は蒋介石より上です。

不拡大派は汪兆銘の影響力に期待します。

汪兆銘による、和平呼びかけ、占領地での新政府樹立、停戦、「新秩序建設」が目標です。

しかし、汪兆銘の呼びかけに呼応するものはいませんでした。

【陸軍中野学校】

1938年、日本初のスパイ養成学校「陸軍中野学校」が設立されました。

岩畔豪雄中佐は、謀略の必要性からその設立を意見しておりました。

彼の上司が「影佐工作」の影佐禎昭です。

暗殺のターゲットとされている中での護衛など、難しい任務もあったことでしょうが、岩畔らの活躍で汪兆銘は何とか新政権樹立まで漕ぎ付けるのです。

(※3)第3次近衛声明

「近衛三原則」とも呼ばれます。

ポイントは、

「善隣友好」「共同防共」「経済提携」

です。

日・満・支で協力してこれにあたろう、と呼びかけるのですが、そこには先の日華協議記録で決めた「二年以内の撤兵」について触れていませんでした。

汪兆銘は衝撃を受けますが、何とか和平を願い、そして自身は自分が国家の元首になるつもりはなく、中国の分裂だけは避けたいと思っていたため、蒋介石に近衛三原則を信じて和平を結ぼう、と提案します。

しかし、拒否され、それどころか党籍も剥奪されました。

そして、裏切り者として暗殺のターゲットとなるのです。

(※4)近衛文麿、突然辞任

一方、日本国内ではドイツとの軍事同盟締結の方針が1938年7月頃に決定しておりました。

しかし、英仏を仮想敵国に加えるか否かで内閣と軍部周辺で意見対立が生じ、その対応に苦慮した近衛は内閣総理大臣を辞任してしまうのです。

近衛三原則を発表したばかり、汪兆銘工作もこれから実現する時、という重要な場面だっただけに周囲も困ったものでしょう。

近衛は後任に平沼騏一郎を推挙し、平沼内閣が誕生しました。

これが1939年年始の出来事でした。

まとめ

★日本は第1次近衛声明を修正。第2次近衛声明(東亜新秩序)、第3次近衛声明(近衛三原則)で蒋介石にも講和を呼びかける一方、汪兆銘政権樹立を目指す。

★しかし、中国国内に汪兆銘に呼応するものはいなかった。

 

★近衛文麿は別件で辞任。平沼騏一郎が首相となる。

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