~只今、全面改訂中~

☞【コロナ社会ではチャイナ・モデルが望ましいと思っている人へ】『民主主義とは何か』(宇野重規、2020年、講談社)

こんにちは。

コロナ時代、マスクをしないのは「自由」なのか、という問いかけから【コチラ】、

そもそも「民主主義」っていうのは、どういうことだ?

という思いに至り、

「民主主義」というものを勉強をしてみようと思いました。

なんでも現在、民主主義は「危機」を迎えているんですって。

なぜこの本の著者が学術会議から外されたのだろう?

本日ご紹介するのは宇野重規先生の『民主主義とは何か』。

すごく売れている本らしく、書店も目立つところに置いて、推しておりました。

宇野重規先生って、後から知りましたが「日本学術会議」の会員に任命拒否された6人のうちの1人だったんですってね。

ところが、本書を読んでみての率直な感想としましては、

なぜ、こんな民主主義を擁護している人が学術会議から外されたのだろう?

と思わざるを得ません。

てっきり学術会議から外された人と言うのは、政府にとって都合の悪い人・・・というイメージを勝手に持っていたのですけれども、

この人を敵視してどうすんだ?と思いました。

この著者が一貫して主張していることは、

民主主義の可能性

について。

https://www.asahi.com/articles/ASNB25QS2NB2UTIL02B.html

本当になんで??

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※2020年12月発売の新刊。学術会議から除かれた4名の理由はしっかり書かれているけど、加藤陽子先生と宇野重規先生に関してはやや不明瞭。しかし、この本は「学問の自由を侵す菅首相はケシカラン」と思っている人ほど読んだ方が良いと思います

今、「民主主義」は危機を迎えている

さて、本書の内容ですが、冒頭で申したように現在、民主主義は危機を迎えているそうです。

そういうと、「トランプ大統領」をイメージする人もいるのかも知れませんが、

むしろ、より注意すべきは、

「コロナ禍では共産党独裁体制(チャイナ・モデル)の方が望ましいのではないか?」という流れ

の方なのではないでしょうか。(本書ではそこまでハッキリとは書いておりませんが。)

しかしナァ、中国って今の国家体制になって、たかだか70年ちょいなんだよナァ。

今は成功しているように見えるかもしれないけど、この先どうなるかわからないゼ。

「民主主義」はこれまでの歴史においても危機を迎えてきたけれど、

その危機を克服したのもまた「民主主義」の力による。

よって、「民主主義」のを信じよう、と読み取りました。

よーく考えて欲しいの。

「チャイナ・モデル」を仮に導入するとして、自分の行動が完全に国家に把握されているのって、嫌じゃない??

「チャイナ・モデル」を推奨する人に限って個人情報が国家に伝わる可能性のあるような法案に反対したりとかしているもので、

「一貫性の無さ」を感じるなぁー。そこに気付いて欲しい。

 
さらに問題と思われるのが、

「経済もチャイナ・モデルの方が実は良いんじゃないか?」

っていう論調でしょうか。

ただですね・・・、そうはならないでしょうけど、「ハイ、明日から貴方の土地は国家のものですよ~」とか言われて嬉しいとは思わないでしょう・・・

あと、中国があれだけSNSに目を光らせているのは、それが国家にとって危険であると認めているからなんでしょうね。

「チャイナ・モデル」となればSNSで自由な発言なんて出来ませんよ。

過去に、科学技術の進歩が世界の「平等化」を推進したことは指摘されておりますが、

私はSNSが民主主義の一翼を担う可能性があると考えますねー。

それとナァ、途上国であっても成長して中間層が育つと、彼らが民主化に向けて動き出すんだよ。

これまでだいぶ抑圧されたことに気付いてな。

 
もちろん、自由は大事なのかも知れないけど、人によっては「自由に伴う責任」よりも、

安定をもたらしてくれる「権威」への隷属を好む人がいるんだって。

エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走(1941)」には考えさせられるな。

そもそも、「民主主義」ってなんじゃらほい?

そして、「民主主義」を語る上で、その「民主主義」が何を指しているのかを明確にする必要があることにも言及されております。

フランスの思想家、アレクシ・ド・トクヴィルはそれまで政治形態に限局されていた「民主主義」と言う言葉の指す意味を拡大しました。

【トクヴィルの示す民主主義】

トクヴィルはアメリカで一般市民がものごとを協力して行なう様子を見て民主主義の可能性を発見。

以後、「デモクラシー」と言う言葉を

①政治制度として
②平等化への趨勢として
③生き方、考え方として

使用。

このうち、最も重要なのは、「生き方、考え方」としてのデモクラシーと考えた。

しばしば誤解を招くので、どの「民主主義」を指しているのかは確認する必要がありますねー。

詳しくは本書を読んで。【コチラから購入

デモクラシー的な生き方をする人は過去の権威などを嫌う傾向があるけど、その結果、孤立する可能性もあるとのこと。

ここでは周囲と協力して何かをすることをしないことを「個人主義」としております。

コロナ禍でマスクをしないのは「個人主義」ではなくて、「利己主義」ですよ。【コチラも!

ミル

「自由とは自分自身のやり方で自分自身の幸福を追求するということ」

としつつも、

「それは、他人の幸福を奪ったり、幸福を得ようとする他人の努力を妨害しない」ことが前提じゃ。

「他人に危害を加える場合」は権力によって自由が抑制されるべき」じゃろう。

よって、他人に飛沫を撒き散らすとか、論外。

私のことは、一度は何かで勉強した方が良いと思う。

あ、ちなみに代議制民主主義への批判もありますが、私は大賛成の立場です。

デモクラシー社会では伝統的なものが嫌われる傾向があるといわれますが、それによって失うものもあります。

「いま、ここ」に関心が集中するため歴史的に重みのあることや、将来に関することが後回しにされてしまう危険性があるんですよね・・・。

これは主に、政治制度と生き方に関係してくることなんだと思いますが、

「多数の暴政」

への警戒っていうのは、トクヴィルもミルも筆者も一貫して主張されていますね。

少数派の意見も受け止めてこそのデモクラシー。

「責任と参加のシステム」こそ重要。

そして、「責任と参加のシステム」こそ重要、と再三強調されております。

選挙の時だけ民主主義

なんていうのは論外です。

古代ギリシアは公職も「抽選」だったというけど、これは現代政治の規模においてはさすがに無理でしょう・・・

政治的に無知な人々に正しい判断ができるのか?という問題は常にありますね。

ミルなどは「ちゃんと勉強している人には複数の票を与えたほうが良いんじゃないか」っていうことも提案しておりますが、これはいろいろあって無理でしょうけど。

そうそう、無理だろうけど、「無力な議会」+「政治教育のひとかけらも受けていない国民」っていう組み合わせが危険なことは、マックス・ウェーバーが100年前に指摘。

現在はより深刻になっている?

いずれにしても日本においては投票率の低下と政治制度への信頼度の低さが問題。

今の選挙システムが良いのかどうか、政党制が良いのかどうかわからねぇけど、さてさて、今後、どうなるんだろうな。

いずれにしても、「民主主義」は常に未完成なんですよ。

だからこそ、1人1人がよく考えて欲しい。

まずは政府の力が及ばないコミュニティなどで、個々の問題にみんなで協力して対応する、ということをされてみては。

(いきなり政党を作る!なんていうのはよくない)

民主主義の可能性を信じましょう。

かなり勉強になりました。

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おまけ:吉野作造の「民本主義」

あと、日本のデモクラシーについてもちょこっと言及されております。

日本の場合、何を起源として、何を画期とするかなど、まだ定まっていない、としつつも、

吉野作造の「民本主義」を紹介。

これは時代が生んだものでもあったんですね。

なんで「民本主義」っていう名前なのだ?と思うかもしれませんが、

当時は天皇主権だったため、「民主」って言葉は不適切なかったんですねー。

ともかく、言っていることは民主主義と考えて良いでしょう。

一応言っておくと、吉野先生の著作名は、

「憲政の本義を説いて其有終の美を済すの途を論ず」

ですからね。1916年のことです。

ただ、日本に平等が訪れたのは戦争による総力戦体制とその後の敗戦、という皮肉。

倫理政経をこれから勉強する人にちょうど良いかも知れませんね。