こんにちは。
今回ご紹介しますのは、夏緑先生の「これだけ!生命の進化」(2015年)です。
夏緑先生の他書があまりにも良かったので、こちらの書も読んでみることにしました。
ちょっと単純化しすぎている点はあるにせよ、遺伝生物学に興味を持ったら、是非。
「日本人はどこから来たの?」に始まって、「猿人は?」、「恐竜は?」、「命は?」と続きます。
おそらく小学生でも2時間で読める割には、かなり広い分野を網羅できるでしょう。
以下、読書メモ。
§1.ぼくら日本人はどこからきたの?
★日本には4万年前に二重まぶたの人が移り住み、3000年前に一重まぶたの人が移り住んだ。
ざっくり言えば、約4万年前に移り住んだのが「縄文人」で、「弥生人」と呼ばれる人が来たのが3000年前。それくらい縄文時代は長い。
(メソポタミア文明や古代エジプト文明などよりはるかに長い。)
★一重まぶたは2万年前の氷河期のモンゴルで突然変異して生じた。
(元々の人類は二重まぶた。 )
★二重まぶたのルーツは東南アジア、さらにインド。古い日本語のルーツをたどってもインドに到達する。
★4万年前、日本人の祖先はデニソワ人と交雑した。日本人の体の中にはデニソワ人の遺伝子も2%ほど混じっている。
★デニソワ人の遺伝子をひく子孫はメラネシア島民で5%くらい。デニソワ人の子孫はモンゴルから南へ行き、日本へは南の島からやってきたと考えられる。
★チベット人が高地で大丈夫なのはデニソワ人の遺伝子のおかげらしい。住んでいるうちに慣れたのではなく、最初から強い遺伝子をもっているのが残った。
★ホモ=サピエンスの出アフリカは6万年前。
★ネアンデルタール人は中東にも住んでいたので日本人にも受け継がれている。
★80万年前はハイデルベルク人がいて、そこからホモ=サピエンス、デニソワ人、ネアンデルタール人が分岐。180年前はホモ=エレクトスがいて、そこからフローレス人、北京原人、ジャワ原人が分岐。北京原人が中国人に進化したわけではない。
★200万年前にヒト族の最も古い原人、ホモ=ハビリスが現れて道具を発明した。
★500万年前に、猿人が二足歩行。400万年前はアウストラロピテクス、500万年前はアルディピテクス(ラミダス猿人)。2本足で歩くと言うのは最大の革命。
★2足歩行により知性が生まれ、文明が生まれ、たまに生まれる大天才によりさらに文明レベルの全体が上がった。
★結婚も発明。
§2.猿人はどこからきたの?
★700万年前、ヒト族は共通祖先からチンパンジーと分岐。チンパンジーは凶暴で残忍。
♨すでに分岐しているので、チンパンジーがヒトになる心配はない。
★アルディピテクスからパラントロプスなどが分岐したが猿人は1種も生き残っていない。猿人パラントロプスはホモ=ハビリスにより滅ぼされた。大型のパラントロプスはゴリラのように温和な性格だったよう。
★猿人vs猿人、原人vs猿人、人類vs旧人があったと考えられる。
★ゴリラより少し前に分かれたのがギガントピテクス。100万年前に現れたとされるが、身長3m、体重500kg。史上最大の類人猿。ちなみにイエティはチベットヒグマ。ギガントピテクスは竹をとりあいジャイアントパンダに敗れた。
★類人猿とサルの違いはしっぽの有無。1400万年前のドリオピテクスにはしっぽがない。
★サルの祖先をたどっていくとリスっぽくなっていく。
★1億4000年前、有胎盤類と有袋類がわかれる。
★2億2500万年前、最初の哺乳類アデロバシレウスが誕生。卵を産んで、乳で育てていた。
(♨これ、NHKスペシャルでもやっていました。初期の哺乳類が卵を産んでいたことにビックリです。)
§3.恐竜たちはどこからきたの?
★恐竜が支配した中生代が2億2500万年前~6500万年前まで。ちなみに恐竜とは「中生代に生きていた大型爬虫類の中で、陸上に住んでいたもの。」
(つまり、プテラノドンたちは違う。)
★その前が古生代、その後が新生代。
★1億5000万年前に鳥類が進化。
(♨補足:「鳥類は恐竜そのもの」というのが最新の学説。)
★1億3000万年前、裸子植物が全盛。(風媒花。)鳥が現れて小さい甲虫が増えて植物の花粉を餌にするようになると、彼らに効率よく花粉を運ばせようとする花が誕生。(虫媒花)甲虫の体にしっかり花粉をこびりつけるために葉っぱが進化して花びらができ、豪華な花が咲く被子植物が現れた。
★裸子植物は冬でも枯れないが、被子植物は虫のいない冬は花を咲かせず眠っているような状態のものも。これでは恐竜は冬の間、大きな体をキープするだけの餌を手に入れることができない。
★いっぽう、鳥類や哺乳類は冬眠中の虫を食べたり、自分も冬眠したり、死んだ恐竜や卵を食べたり何とか生き延びることができた。つまり、6500万年前の隕石で恐竜で滅んだが、もともと被子植物が出現で住みにくくなってたんだ。<冬の食糧難>?
★ユカタン半島への隕石衝突から30万年後、インドにもう一発当たったらしく、これが原因で恐竜は滅んだらしい。
★3億2000万年前に現れたエダホサウルス(大型両生類)は体温調節機能をもっていた。全長3m。背中の帆で体温調節。
★3億4000万年前、有羊膜類が出現。彼らは卵の中に羊膜があり、赤ちゃんと羊水を包んでいる。よって乾燥に強く、陸上に卵を産めるようになった。
★エダホサウルスのような単弓類は哺乳類型両生類となり、哺乳類の祖先となった。竜弓類は爬虫類型両生類から3億年前に爬虫類へと進化し、恐竜や鳥類の子孫となった。
(編注※爬虫類から哺乳類が進化したのではないことが判明。両生類から羊膜類を経て、爬虫類と哺乳類に分化。)
★変温動物である恐竜は寒さ対策に羽毛を得て、羽毛恐竜が鳥類へ進化。
★超巨大山火事で古生代は終了。それまでの酸素濃度は30%であったが、この大火事の後、酸素濃度は10%まで減った。
★哺乳類型両生類のキノドンが哺乳類の祖先。2億4800万年前に現れた。お乳を与えていた。
(※キノドン=イヌの歯、という意味)
★哺乳類と別れた単孔類はカモノハシなど。ハリモグラなどはその進化系。卵を産み、育児嚢で孵化させる。
(※単孔類っていうのはおしっことうんちの孔が一緒)
★ちなみに有袋類はおしっこと赤ちゃんが一緒のところから出てくる。
★3億年前に性染色体(Y)ができて、オスとメスが生まれつきはっきり決まるようになった。Y染色体が生まれたのは両生類の時代。ある1組の染色体の片方からどんどん遺伝子が亡くなって小さくなってY染色体になった。
★カタツムリは雌雄同体。つまり1匹の中にオスとメス両方の機能があり、自家受精が可能。ただ、自家受精した卵はかえりにくい。進化にとっても不利。ゾウリムシのような単細胞の原生動物にも「自家不和合性」がある。ゾウリムシの結合型は10種類以上あるが、同じ接合型同士ではくっつかない。
★3億8500万年前、魚は進化して肺呼吸をはじめ、陸上に生活圏を広げた。3億7500年前のエルギネルペトンが最初に四肢をもった動物で、最古の両生類。
★アフリカのハイギョはうきぶくろが肺に進化。えら呼吸もしているけど、魚なのにたまに息継ぎしないと溺れてしまう。
(♨最新の学説では鰾が肺に進化したのではなく、肺が鰾に進化した)。
★脊椎動物はみな内骨格。無脊椎動物は外骨格であるが、体を大きくするのにいちいち脱皮しないといけないので動きにくい。5億年前に現れた甲冑魚が初期の脊椎動物。
★4億5000万年前、顎口類が生まれた。それまでは無顎類でヒルみたいに吸いついていた。甲胄魚も無顎類。一部を除いてすべての脊椎動物は顎がある。
★さらに先にさかのぼると、ナメクジウオなどの脊索動物。ナメクジウオの仲間。彼らは杯状眼という光の方向だけわかる目をもつ。魚の目はレンズ眼。サメなど軟骨魚類は明暗しかわからない。哺乳類は夜行性、恐竜や鳥類は昼行性。サルの代になって再び夜行性の中で色が見えるようになった。
★脊索動物は5億4200万年前に出現。植物は海藻しかいなかったカンブリア時代。(のちにコケ類が進化して5億年前に陸上へ。)すべての動物の基本形はカンブリア紀に出そろった。
★6億2000万年前、エディアカラ動物群と呼ばれる動物たちがいた。世界最古の多細胞生物でもある。腔腸動物。
★原口が貫通して穴の先が口になるのが新口動物。ウニ(棘皮動物)やヒト。ウニは内骨格。内部の骨格を表皮が覆っている。
★原口がそのまま口になったのが旧口動物。貫通した先が肛門。イカ、貝、昆虫など虫っぽい仲間。
★新・旧口動物の共通祖先がエディアカラ動物群で、クラゲやイソギンチャク。その中でも最も古いのが海綿。いわば、スポンジ・ボブ。れっきとした動物。
★海綿は器官に分化していない多細胞生物。ただ、同じ細胞が集まっているだけ。有性生殖で産むものもあれば、群体の中で育てる種類も。胎生のはじまり。
§4.命はどこからきたの?
★エディアカラ生物群が現れる前の地球は凍り付いていた。(→ただ、火山活動で絶滅)
★原生動物は単細胞でも、鞭毛、眼点(光を見る)、走化性(味やにおいのする方へ向かう)、性別(接合型)など、多細胞生物もびっくりの複雑な器官やしくみをもっている。
★20億年前に動物と植物が分かれ、21(別の書では27)億年前に真核細胞と原核細胞が分かれた。
★動物と植物の大きな違いは葉緑体の有無。これにより二酸化炭素から炭水化物をつくることができる、独立栄養性物であること。人間みたいに餌が必要なのは従属栄養性物。植物は餌のない荒野でも広がっていけると言う強みがある。ちなみに動物と植物が分岐した頃、我々の祖先は単細胞生物であった。
★温泉に住む単細胞の紅藻類・シゾンは最初の植物の姿を今に残す。
★ヨーグルトを作る乳酸菌は酸素が苦手。加熱して酸素を逃がしてから作る必要がある。下等生物の多くは嫌気性。
★21億年前に好気性細菌を合成して酸素呼吸できるようになった。これにより栄養分を徹底的に燃やすことができた。最後には水と二酸化炭素しか残さないのでエネルギー効率が良い。
★真核生物と合成進化した好気性細菌の子孫がミトコンドリア。
★27億年前、真核生物が誕生。
★38億年前に真正細菌と古細菌(真核生物の祖先:アーキア)が分かれた。大腸菌は真正細菌。
★メタン細菌も古細菌。鉄細菌も。どう考えても違う生命体っぽいが我々の祖先。真正細菌は病原性があるものもたくさんあるが、古細菌は病原性がない。
★最初の原核生物が現れたのは40億年前くらい。それ以前はDNAだけ。これは生命体というより、高分子化合物、つまり物質。ただ、原始の海に浮かんでいた有機物を材料にして自分のコピーをつくっていた。コロイドの中に入り込んだDNAが細胞のはじまり。
★DNAの前はRNAと言われている(RNAワールド)。DNAを細胞内で働かせるためにはRNA(リボ核酸)が必要。DNAより壊れやすいので長期記録には向かない。料理メモ、って感じ。
★RNAは壊れやすいので、DNAにコピーするようにして進化した。RNAワールドの生き残りとしてはウイルス。ウイルスは細胞を持っていない。遺伝子と殻だけ。細胞をもっていないので自力で増えることができず、細胞に感染してそのシステムを横取りして増殖する。
★ウイルスより原始的なのはウイロイド。殻すらもたない。
★RNAはどこからきたかというと、岩石の表面の結晶構造を鋳型にうまれた高分子化合物がRNAの鎖になった。
★知性こそ人間の尊厳。
この読書メモだけではおそらくわからないと思うので・・・
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追記:ネアンデルタール人とコロナ重症化が関係?
ネアンデルタール人のDNAとコロナの重症化が関係しているのではないかという話がある。
https://www.cnn.co.jp/fringe/35160338.html
しかし、ネアンデルタール人のDNAってアフリカ人以外なら2-4%持っているんじゃなかったっけ?
そのうちの一部が重症化に関与する、というのだけど、にわかに信じ難い。
今後のさらなる研究を待ちたい。