~只今、全面改訂中~

こんにちは。

今回ご紹介しますのは、「戦艦大和の運用はこうするべきだったのではないか?」というテーマです。

戦艦大和は建造当時は「世界最強」とも呼ばれた戦艦でしたが、「大した成果を上げることができずに」沖縄戦に出向く途中で沈没。

私、軍事については全くの素人ですし、専門的なことは何一つわかりませんが、実に興味深く読ませて頂きました。

以下、「太平洋戦争の新常識」(歴史街道編集部、2019年、PHP新書)、第5章:戦艦大和は「時代遅れ」でも「無用の長物」でもない(戸高一成先生)、および第6章:ここで戦艦大和を投入すれば戦局は違った(平間洋一先生)を参考にさせて頂きました。

§5:戦艦大和は「時代遅れ」でも「無用の長物」でもない(戸高一成先生)

★日本海軍を時代遅れとするのであれば、他の列強諸国は輪をかけて時代遅れであった。見落とされがちであるが、大鑑巨砲を求めたのは日本だけではなく、米英仏独も海軍軍縮条約の失行をにらんで同時期に新鋭戦艦の建造に着手していた。当時の他国の戦艦に比べて、大和は最強である。

★また、航空戦を見抜けなかったというのは、当時、どの国も同じである。(艦隊と航空と、どっちが強いか?というのは奇しくも日本軍が太平洋戦争開戦時に実証してしまった。:【マレー沖海戦】

★開戦時、日本海軍は最も先進的な海軍であったが、問題は戦艦の「使い道」を見失った点にある。航空部隊、機動部隊が大戦果をあげたことで、戦艦部隊が発言力を失ったこともある。0か100かに走るのは日本人の悪い面である。

アメリカは航空戦時代の到来を見て、戦艦を上陸前支援砲撃など対地上砲撃に活用。日本も実現こそしなかったが、「山本五十六が大和でガダルカナルに向かう」計画が実現していれば、戦局に大きな影響を及ぼした可能性が高い。

★大和問題は様々な示唆を与えてくれる。無用の長物だったのではなく、「せっかくの名刀を使いこなす腕がなかった」ことこそ反省すべきであろう。昨今の日本企業の苦戦、原発事故対応などを見て、今こそ運用の問題こそが日本人の弱点だと思えてならない。

§6:ここで戦艦大和を投入すれば戦局は違った(平間洋一先生)

日本が愚かな戦をした、という認識しか残らないとすれば日本人にとって不幸

【こうすればよかった:戦術的活用編】

★どこで運用すべきであったかは、3つの場面が考え得る。

①ミッドウェー海戦

日本は「機動部隊が一撃を加えてから戦艦部隊でとどめを刺す」という、旧来の艦隊決戦思想に則って配置をしていたため、ミッドウェー海戦時、大和は空母機動部隊のはるか後方にいた

しかし、やはり機動部隊とともに行動させるべきだった

大和の通信設備は充実しており、ミッドウェーでの米軍の待ち伏せも傍受していたにも関わらず、肝心の機動部隊にそれを伝えることができなかったのだ。おかげで日本は虎の子の空母4隻を失う。

また、同行することによって、その防御力の高さから「機動部隊の盾」となっていたであろう。

【コチラも】

②ガダルカナル島の戦

半年に及ぶこの消耗戦において、大和はトラック島に待機していた。

1942年10月、陸軍は「高速補給船」派遣を決定。海軍は戦艦金剛と榛名で米航空隊拠点のヘンダーソン基地を砲撃。この砲撃はかなりの成果をあげたが、航空隊は一部残存していたため、金剛と榛名が引き揚げた後に補給船団を襲い、壊滅させた。

もし、この初期の砲撃に大和も参加していれば(♨それを言い出すとキリがないが)大打撃を与え、ラバウルからガダルカナルへの長距離飛行を続けていた航空隊の負担も軽減できたのではないか。

ガダルカナルにおける日本の熟練搭乗員の損失はあまりに痛い。

【コチラも】

③第3次ソロモン海戦(1942年11月)

実際の海戦でアメリカは最新鋭戦艦「サウスダコタ」と「ワシントン」を惜しげもなく投入。

比叡、霧島といった旧式戦艦を壊滅させた。

大和を投入していればもっと戦えたであろう。

【コチラも:wiki】

【こうすればよかった:戦略的活用】

★また、戦略的な活用法として、以下の3つを挙げる。

①「抑止力」

その存在を明らかにして日米交渉に活用すべきという主張は開戦前からあった。そもそも米海軍はハル国務長官ら対日強硬派、あるいはルーズベルト大統領に対して、可能な限り「日本とは戦わせないでくれ」と言っていた。当時、米海軍はイギリスの支援に手一杯であったのと、熟練乗組員は太平洋に少なかったのもあり、これでは勝てないと考えていたのである。

もし真珠湾攻撃が遅れることになれば、ドイツの戦況を見て、同盟破棄などさまざまな手立てを考えることができた。

(♨しかし、ルーズベルトの戦意の高さ、総力戦となった際は圧倒的に米国優位であったことを考えると、あまり抑止力とはならなかったのでは…【コチラも】

②「艦隊決戦」

やはり当初の戦略通り、「真珠湾奇襲などせず、艦隊決戦に持ち込むべき」だったという考え。

もし、真珠湾を攻撃していなければアメリカも当初の戦略通り、マーシャル諸島を襲撃し、艦隊決戦となったであろう。

そもそも、大和の竣工を待ってからの開戦でも良かったではないか

当時のアメリカ太平洋艦隊のキンメル長官は戦艦第一主義であり、航空部隊を甘く見ていた。

航空戦力比は日本が優勢であったため、航空部隊に対する備えは甘かったであろう。また、艦隊の命中率も日本海軍は米海軍をはるかに上回っていた。

(※これについては日本の命中率の査定が甘かったという説もある。)

③「インド洋投入」

イギリスにとって重要な補給路であるインド洋に投入して、その補給路を断ち切れば、イギリスは窮地に陥ったのではないか。実際、英軍はインド洋に艦艇を派遣する余裕などなく、この作戦は成功確率が高かった。

これにより、北アフリカで快進撃をしていたドイツのロンメル将軍と、日本がスエズ運河を通じて中東でつながり、日本にも中東の石油が送られることとなったのではないだろうか。そして、中東、インドで独立運動も起きたためにイギリスが壊滅的な打撃を受けていたであろう。

★他にもラバウル航空戦で投入していれば、など枚挙に暇がない。

まとめ

【戦艦大和:こうすれば良かった】

★戦艦大和が悪かったわけではない。その「使い方」が間違っていたのだ。

★こうすれば良かった:戦術的活用編

1)ミッドウェーで機動部隊とともに行動。後方で控えていないで。

2)ガダルカナル戦に初期から砲撃参加。もったいぶらず。

3)第3次ソロモン沖海戦でも参加すべき。もったいぶらず。

★こうすれば良かった:戦略的活用編

1)交渉の抑止力として。まだ建造中だったが。

2)真珠湾奇襲などせずに最初から艦隊決戦に持ち込むべきだった。

3)インド洋投入。イギリスの海上交通路を断ち、ドイツとも連絡。

♨阪神ファンではないのですが、ある時の日本シリーズでタイガースが、全盛期の藤川球児の出番がほとんどないまま終戦したことをふと思い出しました…。

<☞【太平洋戦争勃発はなぜ1941年だったのか?】>はコチラ

<☞【チャーチルとルーズベルトは戦争を望んだ?】>はコチラ

書籍購入はコチラ

太平洋戦争の新常識 (PHP新書) [ 歴史街道編集部 ]価格:946円
(2021/5/1 17:21時点)
感想(1件)
太平洋戦争の新常識【電子書籍】価格:850円
(2021/5/1 17:21時点)
感想(0件)
電子書籍もあります。