文部省科学省教科書調査官、鈴木正信先生。近年、蘇我氏関連の書籍は目白押しであり、蘇我氏が果たした役割が再評価されている。
★蘇我氏は奈良県葛城市地方を出自とする可能性が高い。
★蘇我稲目が天皇家と婚姻関係を結んだ。
★聖徳太子の数々の功績は太子だけではなく、推古天皇、蘇我馬子と三者によるものが多い。
蘇我本宗家
実在が確定している人物として、蘇我稲目、馬子、蝦夷、入鹿が知られる。
6世紀前半から7世紀中葉までであり、蘇我本宗家とも呼ばれる。(一方、蘇我倉山田石川麻呂などは同族であるものの、本宗家ではない。)
蘇我氏の本拠

蘇我馬子が自分の「本居(うぶすな=出身地)」は葛城地方と言っていること、蘇我蝦夷が葛城の高宮に祖廟を立てていることなどから、蘇我氏の出自は葛城地方である可能性が高いと考えられている。
この地方には5世紀に大きな勢力を誇った葛城氏が存在したが、5世紀後半に没落したと考えられる。
蘇我氏は葛城氏を構成した集団の一部と考えられている。
【一方、雄略天皇のもとで彼ら葛城氏を滅ぼしたのが物部氏たちであると考えられている:古代史戦乱篇コチラも】
※馬子の代で推古天皇に葛城の地を治める権利を申し出たが、これはさすがに断られている。
蘇我稲目(506?~570)
★536年に大臣に任命された。大臣に任命されたのは葛城氏の勢力基盤を継承したこと、渡来系氏族を組織し、王権の財政を担っていたことなどが要因として考えられる。
★娘2人を欽明天皇の后にすることで、計18人の皇子女の外祖父となった。そのうち、用明、崇峻、推古と3人の天皇が誕生した。
★屯倉経営で顕著な活躍を示した。屯倉は農業経営体としてではなく、政治・軍事的な拠点、貢納・奉仕関係の拠点という側面ももっていた。
506 | 稲目誕生。武内宿禰の末裔、蘇我高麗の子という伝承がある。 |
536 | 第28代宣化天皇の時代に大臣に就任。 |
538 | 仏教公伝(あるいは552年) |
540 | 欽明天皇となってからも大臣に留任。 |
570 | 没。 |
蘇我馬子(551?~626)
★蘇我稲目が570年に没すると、その大臣の地位を継承した。
★物部守屋と対決。これを滅ぼす。(丁末の乱:ていびのらん、587年)ただ、崇仏派と廃仏派の争いと考える見方は再考の余地がある。【古代史講義戦乱篇:コチラも】
★重要な政策として589年、東山道・東海道・北陸道へ使者を派遣して諸国の国境画定が挙げられる。同族の境部氏(弟の摩理勢の系統)が管掌。東日本へ国造制を拡大したと考えられる。
★592年、東漢駒(やまとのあやのこま)に命じて崇峻天皇を暗殺。しかし、事後の経過を見ると誰も動揺していないことから群臣層の支持が背景にあったと考えられている。
★大夫の合議には畿内有力氏族から1人ずつ代表者を出すことになっていたが、これには息子の蝦夷のほか、一族の蘇我倉氏、境部氏、小治田氏、久米氏、桜井氏、田中氏などを蘇我氏から独立させ構成員として送り込んだ。
※冠位十二階において、馬子は与える側であり、いかに権力が大きかったかがわかる。
551 | 蘇我稲目の長男として出生。 |
570 | 父・蘇我稲目死亡。 |
587 | 物部守屋を滅ぼす。 |
589 | 国境策定。 |
592 | 崇峻天皇暗殺。姪の推古天皇即位。 |
596 | 飛鳥寺完成。 |
620 | 聖徳太子と共に「天皇記」「国記」「臣連伴造国造百八十部并公民等本記」を記す。 |
626 | 没。 |
推古天皇(554?~628)
★欽明天皇の皇女であり、母は蘇我馬子の姉。敏達天皇は夫でもあり、異母兄でもある。用明天皇は同母兄、崇峻天皇は異母弟。崇峻天皇暗殺後、593年、天皇即位。
★かつて聖徳太子の功績とされたものは推古天皇が主体的に関わっていたものが少なくない。蘇我馬子、聖徳太子と3人で協力して政務にあたっていた。
★594年、仏教興隆の詔を発した。588年から造営が開始されて596年に完成、606年(もしくは609年)に釈迦如来像が安置された飛鳥寺(法興寺)には仏教の公的受容宣言のほか、王権への恭順を示す誓約としての意味もある。
※飛鳥寺・・・一塔三金堂様式の伽藍配置。朝鮮諸国の寺院の要素が融合されている。蘇我氏の氏寺としての性質ももつ。
★603年、冠位十二階の制定。
※古代史のカテゴリーとしては推古天皇即位からが飛鳥時代である。
554 | 欽明天皇皇女として出生。母は蘇我稲目の娘。 |
571 | 敏達天皇后となる。2男5女をもうける。 |
586 | 異母弟の穴穂部皇子が侵入し、皇后を犯そうとしたところを三輪逆に助けられる。三輪逆は物部守屋により殺害。【これが蘇我物部戦争の遠因でもある。古代史講義戦乱篇:コチラも】 |
587 | 蘇我物部戦争 |
593 | 崇峻天皇暗殺に伴い、史上初の女性天皇として即位。 |
594 | 「三宝を敬うべし」(仏・法・僧) |
603 | 冠位十二階 |
604 | 十七条憲法 |
628 | 死去。 |
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