『古代史講義戦乱篇』を読みながら、『古代史講義』を読まないのは心得知らずと感じ、『古代史講義』(ちくま新書、2018年)も購入した。第1章は「邪馬台国から古墳の時代へ」(島根県古代文化センター主任研究員、吉松大志先生)。例によって読書メモを軸に書いていきたい。
①邪馬台国論争の現在地
②古代出雲にも注目
③古墳から考える古代
①邪馬台国論争の現在地
卑弥呼が登場する文献は「魏志倭人伝」であるが、邪馬台国の場所については、「畿内説」と「九州説」に分かれており解決していない。
そして「倭人伝」を恣意的、独善的に解釈する人間は後を絶たず、百家争鳴状態になっている。
♨たしかに、僕も「邪馬台国=北九州の小国で、近畿には別の王権があったのでは?」などと言いたくなる。でも、こうやって素人が憶測だけで勝手に書くのが一番問題なのであろう。
結論としては、「まだわからない。わからないのと、魏志倭人伝だけで判断するな」ということ。
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♨史料問題集ほど役に立つ問題集はない
ここで問題。次のうち、「魏志倭人伝」に書かれているものはどれか?
①樂浪海中有倭人 分爲百餘國 以歳時來獻見云
②安帝永初元年 倭國王帥升等獻生口百六十人 願請見
③景初二年六月 倭女王遣大夫難升米等詣郡
結局のところ、試験は史料から出されるので、史料勉強は実に効果的。
この問題は、故・竹内睦泰先生の「史料問題集」を読めばすぐに出来るようになる。
僕もこの本がなければ、歴史検定3級で100点はとれなかったであろう。【コチラ】
ちなみに問題の答えは③。
①は「漢書」地理志、②は「後漢書」東夷伝。過去問では①の楽浪郡の場所が問われたり、②の「生口」とは何かが問われたりする。③では難升米「なしめ」という人物も問われる。
この時代の史料は数少ないが、それだけにしっかりと覚えておきたい。
※この時代の交易について
「原の辻=三雲貿易」
倭人伝ばかりから考えるのではなく、他の面からも考えるべきであろう。
弥生時代中期末(紀元前1世紀)から終末期(3世紀半ば)、交易の中心は壱岐の原の辻遺跡と、福岡県糸島市を中心とする三雲遺跡群であった。
糸島は倭人伝によるところの「伊都国」と言われている。
これらの地域では朝鮮の土器、楽浪郡の土器などが多数出土している。

元地図は無料サイト「map-it」から拝借。
弥生時代終末期から博多湾が中心に
ところが、弥生時代終末期から古墳時代初頭にかけて糸島地域の出土は減り、かわって、その東の博多湾、福岡平野が中心となった。
古墳時代になると博多湾貿易が最盛期
古墳時代前期前半(3世紀末から4世紀前半)、福岡県福岡市にあたる西新町遺跡に代表されるよう、博多湾貿易が最盛期に。
しかし、その後、衰退。
これには新たな交易体制が出来たと考えられる。
卑弥呼がいた時代は「原の辻=三雲」貿易から博多湾貿易への過渡期であった。
【後編へつづく】