~「もう一つ上の日本史」出版に伴い、勉強方法も変える必要が出たので、全面改訂突入します~

☞【毎月15日に断食する犬がいた?】『犬の日本史』(谷口研語、2012年、吉川弘文館)

あまり試験には出ないだろうが、徳川綱吉のあたりを勉強中にちょっと興味が湧いて読んでみた。

「生類憐みの令」が出る前は

日本にも薬として犬を食べる文化があった(!!)

(「牛」は農耕の友なので食べない。)。

これは、弥生時代からの習慣らしく、大陸から渡ってきた人がもたらしたらしいのだが、日本にも文化として根付いていた。まあ、昔ならなんでもあるか~。

また、

「毎月15日に断食をする」という「信心深い犬」がいた(!)

という話も面白い。

以下、読書メモ。

勝海舟が親子ともどもイヌに睾丸を食われた話もネタとして載せても良いかと思ったりもしたが、これは載っていなかった。

1.日本史への犬の登場

★縄文時代には確実に飼われていた。(神奈川県夏島貝塚。9500年前。)
★埋葬されたイヌも。(各地に。8500年前。)
★狼がイヌ化したというより、最初からイヌを連れてきたと思われる。
一番は狩猟のパートナー。犬(数匹)+狩人(槍)vsイノシシ、鹿とか。戦国時代には槍→弓。 (♨旧石器時代の多くの記述から考えると人間が弓矢でシカを射抜いたものって思っていたけど、イヌがパートナーとなっていたことを考えると様々な狩りの姿が想像できる。)
★弥生時代には埋葬されたイヌは激減。イヌの「地位低下」がおきたのと「イヌが食われる」ように。(♨筆者はこれを民族の違いと考えている節があるようだが、最新のDNA研究的にもそれはないだろう。)

2.白い犬の幻想

★白い犬は神の遣いという説は多い。

3.平安京の犬のいる風景

★清少納言と親しかった犬も。ただ、全体としては猫派。(♨(笑))
★犬は人糞を食う。
★しかし、当時、鎖なんてものはなかったから、犬は寺社・寺院など行きたいところにいき、穢れをもちこむとされ、問題に。現代と違って当然、避妊手術などないので出産とかも問題。鎌倉幕府御所の畳の上にイヌの糞があった説話も。(吾妻鏡)

4.犬と中世の武家社会

鎌倉時代の犬は『獲物』。室町幕府は『犬追物』ブーム。土岐頼遠「犬と院をかけて光厳上皇の牛車に矢をかける」
★犬追物で落馬するケースも。難しいのだ。毎日やるくらい流行しているが。(もっとも犬追物で犬は死なない。)
★義満は犬好き。有性、無性、という2匹を義堂周信からもらう。
★北条高時の闘犬狂いは有名。服着た犬が鎌倉市内に5000匹。年貢の代わりに犬。輿にのって移動。「肉に飽き錦を着たる奇犬」
★ちなみに闘鶏は日本書紀の時代からある。
★北陸の南朝軍にスパイ犬も。
★戦国時代にイヌが伝令として使われた件は1件しかないが、欧州では軍用犬の発想は多数。第1次世界大戦でドイツ軍が多くのシェパードを戦場に投入し、大活躍したことはよく知られている。日本では満州事変以降に、10万匹ほどが駆り出されたとの推定も。

5.海外からやってきた犬

★日本にはイヌを改良しようと言う発想は少ない。
★平安時代のチン、室町時代のダックスフンドは外来の贈り物。戦国、江戸時代にも。
★滝沢馬琴「南総里見八犬伝」はまさに「犬」。(※滝沢馬琴は犬に詳しい。)
★綱吉はチンを愛玩。

6.鷹狩をめぐる犬たちの明暗

★鷹狩は世界中で行われてきており、日本では遅くとも古墳時代には開始
★田畑を荒らすなどの理由でしばしば禁止
★綱吉の時代に禁止されたが吉宗の時代に復活。
★殺されて鷹のエサとされた駄犬も・・・。飼育費も大変なので1日に数匹殺されたり。

7.犬公方と江戸の犬

生類憐みの令でにわかに政治の表舞台に。特に江戸で厳重。20年間。綱吉はいぬ年生まれ。
★牛馬に重い荷物を背負わせるのもNG。
★飼い犬が孕んで、出産で子犬が死んだりしたら一大事。店を休んで注意。
★イヌは「増長」。
★イヌ医者もできたが、相当いい加減。鍼灸師も(戸田茂睡「御当代記」)。
★犬の世話が負担→捨て犬になる→すでに多かった野犬と合わせて犬だらけ→大規模な犬小屋を建てる→そこで白米を与えられるという「ありがた迷惑」を受ける→犬も病気に
犬を殺して死刑になった人は多し。(※と、一般には思われていたが、そうでもなかった。河合敦先生の「逆転した日本史」に詳しい。)拾った子犬を捨てただけでも死刑、など誇張。
★1709年、綱吉没。ただちに廃止。
★この法令がどうだったのかは塚本学「生類をめぐる政治」が詳しい。病人を大事にする風潮とかは生まれた。(♨現在、綱吉は再評価されている)

8.犬を食う人、人を食う犬

★仏教伝来で肉食はなかった、と思われがちであるが、肉食がなかったわけではない。
★下々のものは食べていたという。綱吉の頃に徹底強化。
★フロイス「野犬、鶴、大猿、猫などを喜ぶ」「牛は食べないで家庭薬として犬を食べる」 【フロイスについてはコチラも
★禁令が出された地域もあったが。
★太平洋戦争直前には販売許可。
★ヒトを食う犬も。イヌの先祖は肉食獣なので大型犬の隣に赤子を1人で置くとかというのは、ダメ。人間でも「魔がさす」という言葉があるくらい。犬もさりなん

9.犬の霊力・呪力・超能力

★人間に信心深い人がいるように信心深い犬もいる。毎月15日に断食をするイヌの話や、社寺詣でをする犬。
おもしろいのはお伊勢参りを主人の代わりに行くイヌ。これは決して珍しいことではなかったという。最初の犬は1790年、安房の庄屋の犬。首に「お伊勢参り犬」と名札をつけてお伊勢参りをしたとのこと。幕末の多くの書物にも書かれている。豚の話もあり、これは珍しい。
★犬神をまつるなど、霊力も期待。

10.狂犬病は犬と人の共通の敵

★すでに紀元前のギリシャ時代からあった。
★ウイルスが脳を冒すとわかったのは19世紀になってから。
★日本では1732年が最初の報告(?)
★中世の惣掟で「犬を飼ってはいけない」という地域も。狂犬病
★犬も多く殺された。
★パストゥールが1850年代にワクチンを開発
★日本でも1950年、狂犬病予防法が成立し、ようやく鎮静化
★自由なイヌは失ったが、死に至る病から解放された

11.消滅しかけた日本の犬の歴史

★鷹狩に連れて行かれたイヌなど、一部を除いてほとんどが放し飼い。綱吉の時代を除いて平安時代とあんまり変わりがない。
明治維新後、在来日本犬が殺され、洋犬が大事にされる傾向が。昭和3年に保存運動。
★純粋な日本犬というのはいない。各地域により多様な特徴をもつ。

あとがき

★「ロビンソン=クルーソー」でデフォーはパートナーとして犬を登場させた。「はなさか爺さん」でも「桃太郎」でもイヌは重要な役割を果たす。主人公を助けるとともに、子どものよき遊び相手と言う一面もある。
★かといって、子供のために飼うとしたら、無謀でしかない。毎年、日本全国で十数万匹が処分されている現状をみると、大人自身が責任をもって飼うべきであろう
★「犬嫌い」の人は犬を追うことはあっても、野犬を生み出すようなことはしない。犬の敵は「犬嫌い」ではないのだ

♨山崎宗艦「犬菟玖波集」俳諧連歌。俳句のもと。犬はおもしろい、という意味で名づけられた。