~只今、全面改訂中~

☞【昭和史の1st Book!】『教養としての「昭和史」集中講義』(井上寿一、2016年)

著者の井上先生は学習院大学法学部教授を経て、現在学習院大学学長。専攻は日本政治外交史。

高校の教科書を抜粋して、それに補足を加えてくれる、という本であるが、やっぱり、

これくらい説明してくれないと近現代史はわからない

と思う。

たとえば、

田中首相は外務大臣を兼任し、中国に対しては、それまでの憲政会内閣における協調的な幣原外交とは異なる強硬外交を展開した。

 

(山川出版社『日本史B 高校日本史』p275

という記述に対し、

「幣原外交も田中外交も、中国に対する態度というのは基本的には変わらない」

「教養としての昭和史集中講義」p41

と説明。その理由として、幣原が外務大臣をしていた時期(1924-1927)は中国で軍閥が割拠している状態であったため、日本が満州を守ることができた

一方、田中に変わった1927年は蒋介石の国民政府樹立があり、国民革命軍が各地で略奪や暴行事件を起こしながら北上していったため、日本は蒋介石の軍隊から日本人居留民の生命と財産を守る義務が出た、とのこと。

これは、イギリスやアメリカも同じで、

英米と足並みをそろえて中国情勢に対応した

というのが、この時期というわけだ。

田中義一と言う人はすごく良く書かれていることもあれば、すごく悪く書かれていることもあるので、どう理解して良いかわからなかったが、少なくとも「協調的な幣原」、「強硬的な田中」という単純な図式は間違いということがわかった。

 このような感じで進んでいくので、実に助かる。

ちなみに「高校生が近代史まで辿り着かない」と言うのは過去の話らしく、現在は古代から始める授業と近世から始める授業が同時進行するなど、各学校が工夫して、近代史に辿り着かなかったなどということがないようにしているとのこと。

「ルーズベルト陰謀論なんてない」「日米開戦は避けることができた」「アジアの解放が本当の目的であればアメリカと戦争する必要はない」「日本の本来の敵はソ連、国民党の本来の敵は共産党」「改憲したいが親米、護憲だけど反米という保守と革新がねじれて対立」などなど気づかされるところが多数。近代史に入る前に是非読みたい。

つづきは、本書で。

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