~只今、全面改訂中~

☞【ポツダム宣言は有条件?】『フーバー大統領が明かす 日米戦争の真実』(加瀬英明、2019年)

こんにちは。

今回ご紹介しますのは、『フーバー大統領が明かす 日米戦争の真実ー米国民をも騙した謀略』(加瀬英明編、2019年、勉誠出版)です。

表紙帯には「仕掛けたのはアメリカだ!刷込まれた戦争責任論の迷妄を解く」

「フーバー大統領」といえば、フランクリン・ルーズベルトの前の大統領で、「世界恐慌」発生時の大統領ですね。

世界恐慌に対して「何もできなかった」みたいな書かれ方をされることが多かった人です。【コチラも】

しかし、この方、もともと有能な人でした。

さらに、2011年にフーバー大統領の回想録に基づいて刊行された『裏切られた自由』が発表されると、そのイメージはおろか、アメリカ近代史への認識を変化させました。

『裏切られた自由』は2017年に「邦訳本」も出版されたので、

本来はその本を読むべきなんでしょうが、

いかんせん分厚い…(上下巻合計1300頁…)

ですので、もうちょっと「薄い」本を探していたところ、本書に出会いました。

本書はまず「フーバー大統領の経歴」から始まります。

…フーバーは6歳で父を亡くし、8歳で母を亡くします。

叔父に引き取らて、家の手伝いをしながら勉学に打ち込み、鉱業技師を目指して大学に入学しました。

大学時代も複数のアルバイトをこなして学費を稼ぎながら、地質調査に参加。

卒業後は、カリフォルニアの鉱山で2年間働いた後、ロンドンの鉱業会社に就職、という努力家です。

しかし、単なる努力家で終わらず、彼には「実力」がありました。

入社後、またたく間に才覚を発揮し、オーストラリア、中国で鉱山開発を行い成功。

やがて、「アメリカで最高の給料をとっている男」とまで呼ばれます。

その後は独立しますが、そこでもまたしても成功します。

その勢いは財界だけにとどまらず、ウィルソン大統領時代に「食糧機構長官」に登用され、戦時下の食糧統制行政を一任されるまでに至りました。

さらに1921年のハーディング大統領時代には「商務長官」に抜擢されます。

この時期、「人道上」の観点から飢餓に苦しむソ連、ドイツに食糧支援を断行しました。

また、1927年にはミシシッピ川氾濫の復興指揮をとり、

その実績から1928年に大統領選に勝利、1929年3月から「大統領」に就任するのです。(この時、54歳の若さ!)

…ここまでが大統領になるまでの華麗な経歴ですが、大統領就任後は「世界恐慌」のために、一転、不遇の時代となりました。

そして、評価はガタ落ちし、1932年の大統領選で敗北。

ルーズベルト政権となるわけです。

フーバーによれば、日米戦争は

「ルーズベルトという、たった1人の狂人が引き起こした」

だそうです。

ルーズベルト在任中はルーズベルトの「容共主義」に対して警笛を鳴らし続け、

ルーズベルト死後は親しかったトルーマンに日本との「早期講和」を進言、

ソ連の脅威に対抗すべく、中国大陸からの日本軍撤兵は「なるべくゆっくり」させるように説きました。

そうすれば、朝鮮戦争も起きなかった??

…と、いうようなことが「第1章」で書かれております。

非常に興味をそそられる内容ですね…

しかし。

ちょっと気になったのが、p17。

「ポツダム会議で(中略)、それまで連合国が日本に対して無条件降伏を要求していたのを取り下げて、条件付き降伏に改めることが決められた。…宣言は日本国軍隊の無条件降伏のみを、要求している」(引用一部省略)

という部分です。

あれ?

ポツダム宣言って、「無条件降伏」って思っていたけど…

そして「日本軍部」に対して無条件降伏ってあるけど、いくら陸軍が言うこと聞かないとは言え、表向きは日本国政府も日本国軍部も一緒では…??

ということで、浮世博史先生の出番。

「もう一つ上の日本史」(近代編)で言及されておりました。

俗説の集大成に対する反論の集大成

結論から言いますと…

ポツダム宣言=やっぱり無条件降伏

ただし、天皇は「バーンズ回答」を読み、「占領下でも天皇が残り、天皇制も存続する」と判断しておりました。(コチラも)

「敵は国体を認めると思う。之に付いては不安は毛頭ない」by昭和天皇

外務省編「終戦史録」、「木戸幸一日記」など

その後も「無条件降伏」とは「軍だけでなく日本国の降伏であった」ということが、吉田茂の国会答弁(1949/11/26、1950/2/6)、西村熊雄条約局長の答弁(1951/10/24)、最高裁判所の判決文(1953/4/8)などで出されております。

ポツダム宣言の原文を読んでも、素人では非常に解釈がわかりにくいのですが、「天皇制廃止」に言及しているわけでもなく、やはり上述の昭和天皇のご判断が正しいのだろう、と思います。

(軍部にだけ無条件降伏、と読めなくもないのですが、その承認先は日本国政府ですので、他の方も指摘されていますように「日本国政府に軍部の無条件降伏を認めさせた」で良いのだろうと思います。)

というわけで、もしかすると、本書は「トンデモ本??」と思ったりしてしまうのですが…

もう少し読み進めてみたいと思います。

しかし、「無条件降伏」と思っていたところ、専門家が「有条件降伏だ」と言うと、正直、混乱しますね…

著者は中曽根内閣で顧問を務めた方や、官僚出身の方であったり、

そうすると、素人ととしては、「通説では<無条件降伏>なんだけど、この人たちは特別な情報をもっていて、有条件と言っているのではないか?」と勘繰ってしまいます。

結局、天皇制は保持されるので、良いのですが

嗚呼、日本史は難しい…

もっとも、一番のポイントは、「日本が防共の役割をしていたのに、コミンテルンに操られたルーズベルト政権が日本を叩き落とした」という点が、いわゆる日米保守派の言い分、ということで、良いのでしょうか。

いわゆる「教科書的」な本ではありませんが、こうした本を読むことで教科書も深く読めるという利点があるので、保守派の意見として、そしてルーズベルト批判本として役に立つかとは思いました。

(↑)「ルーズベルトの失策」を19もあげる執念!(中には意図的な失策もあったり、トルーマンの失策であったりするものもありますが。)

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