倉山満先生の著作は世界史を勉強していた時から通算して何冊も読んだ。
「嘘だらけの近現代史シリーズ」などは新刊が出るたびに買っていた。
すごい熱量で面白い本が多い。
しかし、受験勉強の参考になるかどうか、と言われると、答えは「否」。
amazonのreviewの評価は非常に高いが、混乱をきたす恐れと、脱線が多い気もする。
しかし、倉山先生の著作は受験とは関係なしに、どれか1冊読まれることはお勧めしたい。
言葉に「力」がある。
本書では、「1度失敗した人への歴史的評価」を学んだ。
誰のことを指しているかというと、
井上準之助。
世界恐慌に際しての金解禁は「大失敗」と評価されることが多い。
倉山先生も金解禁については「失敗」と評しているが、
「金解禁で失敗したからといって、すべてダメだったわけではない。」
と擁護。
その1つが満州事変後の政情不安におけるリーダーシップ。
この時期、若槻禮次郎が内閣総理大臣であったが、拡大する満州事変に対して右往左往。
安達謙蔵内相は憲政会との「協力内閣」を提案したが、これに対して、井上準之助、幣原喜重郎は「単独で行うべき」と主張。
(これには民政党内の派閥争いという側面も含んでいたのだが・・・)
結果として単独内閣で事態は解決に向かおうとしていたが、安達謙蔵内相による造反で、内閣は総辞職。
(日本史を勉強している人の間では常識とはいえ、一応記すが、当時は内閣の1人でも辞職すると総辞職となっていた。)
戦後は「安達謙蔵悪玉論」が言われていたが、現在は評価が変わってきていて、協力内閣で立ち向かうべきだったというような風潮に学界はなっている。
しかし、倉山先生に言わせれば、「憲政の常道」を守るべく奮闘した井上準之助こそ評価に値する、と。
どっちが正しいのかというのは、何を基準にするかで変わってくるという面もあるのだが、井上準之助という人間が金解禁で失敗したからといって、ほかのことも失敗したであろうという目で見てしまうことは、本質を見る目を曇らせる。
もちろん、1度失敗した人間を擁護して再び失敗を繰り返した服部・辻コンビの例もあるので、「1度失敗した人間こそ良い」という論理もまかり通らないが。
若槻内閣総辞職後は、犬養毅政権となり、五・一五事件がおき、西園寺公望は後継首相に「憲政の常道」を放棄して元海軍の斎藤実を指名、斎藤実内閣において、国際連盟脱退というのが一連の流れである。
しかし、政治家にはなれても、良い政治を行うことができる人は少ない・・・。
【コチラではどちらかと言えば、協力内閣を行わなかったことを批判】
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