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☞【これ1冊で維新通!】『明治維新の「嘘」を見破るブックガイド』(田中聡、2018年)

こんにちは。

今回ご紹介しますのは、田中聡先生の『明治維新の嘘を見破るブックガイド』(2018年、河出書房新社)です。

一言で言いますと、「買い」です。

特に「西郷隆盛」論は必見。

これまで、明治維新は「青春と革命」的な扱いで、「建国神話」ともなっておりました。

坂本龍馬なんてヒーロー中のヒーローですよね…

一方、近年は「明治維新否定本」がブームとなっております。

これは原田伊織先生の「明治維新とその過ち」(2012年)が火付け役と言えるようです。

本書はそれら「新しい明治維新像」を主張する著作を紹介する「ブックガイド」でして、20冊分以上の本の「良いとこ取り」がされております。

ですので、これ1冊で「維新通」となれるスグレモノです。

しかし、それ以上に本書をオススメしたい理由は著者の「解説」と「まとめ方」にあります。

中でも舌を巻いたのは、第2章「英雄たちの神話を検討する」における「西郷隆盛」論です。

西郷の性格について

他者をすべて敵か味方にわけ、敵と認定した相手には憎しみを向ける

 
p48 家近良樹「西郷隆盛 維新150年目の真実」の項より

西郷はノートにも人の名前のところに「正」だの「奸」だのと書き込むほど他者を敵か味方かに区別していたそうです。

そりゃ、味方には優しくするため、彼のシンパから見たら「西郷さん=良い人」になるのでしょうね。

つまり、西郷にとっての「敬天愛人」の「人」とは「味方」だけのものなんですね。

そう考えると相楽総三が西郷にひどい仕打ちを受けた理由もわかりますね。

さらに、筆者はこうなった要因として薩摩藩の「郷中教育」をあげております

薩摩藩の郷中教育

(郷中教育は)「外からは一切の口出し無用と言う閉鎖的空間で、指導と称するいじめが横行した。内で起こった問題は、決して外には出さず、内輪で処理する。内部の年長者が下の者を教育するので、年長者が未熟なとき、その過ちが正される機会がない。つまり、年長者への「絶対的服従」と、閉鎖性による「独善性」という弊害があった…

 

p58 森田健司「西郷隆盛の幻影 維新の英雄はいかにして作られたか」の項より

ちなみに郷中教育は薩摩の武家の男子に限られた教育システムです。

江戸時代に全国に寺子屋が11754個開設されたましたが、薩摩ではたった19。

私塾は全国で1090あったが、薩摩では0。

つまり、薩摩には庶民教育は無いに等しかったのです。

この閉鎖的なシステムで西郷は育ちました…。

西郷隆盛虚像論

そして、「南洲翁遺訓」により作られた西郷のイメージに対しましては、

「豪胆にして情に厚く、鷹揚で、博愛。…つまり「西郷さん」のイメージは、ちょっと古くさい、日本人の理想像なのである。そして、実像は、それと違うというだけでなく、理想像の裏面をなしているような気がする

 

p61 森田健司「西郷隆盛の幻影 維新の英雄はいかにして作られたか」の項より

と辛口。

そして、

西郷の虚像は、日本人が好んだリーダー、いや、ボス像の典型だ。そして実像もまた、日本の現実のボスの典型ではなかろうか。

 

p62 森田健司「西郷隆盛の幻影 維新の英雄はいかにして作られたか」の項より

とまとめております。

うーん、唸りますね。

こういう人は「人間味あふるる人」という評判があったりしますが、こういう人、身近に1人くらいいませんかね…

彼ら、西郷タイプのボスというのは内輪の社会でないと成立しないボスなんですよね…。

家近先生の著作、森田先生の著作も読んでみたいと思いました。

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感想(2件)

吉田松陰=「何もしえなかった人」

ちなみに、吉田松蔭は「実際には何もしえなかった人」とキッパリ。

忠君愛国のモデルとされているのは、長州人により「利用された」ためと。

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