こんにちは。
今回ご紹介しますのは、「日本語の歴史」(2006年)。
古代より中国語とは別の言語体系を持つ日本語ですが、表記の上では漢字を「借りる」ことにしました。
しかし、一音一音に対して漢字をあてはめていたので、ものすごく長い長文に・・・
その問題を解決するために作られたのが、「ひらがな」「カタカナ」です。
§2.文書をこころみるー平安時代
<「漢式和文」>
★飛鳥時代には漢文から離れて「漢式和文(一般的には「変体漢文」)」で書かれた文章が見られる。
「漢式和文」では、
①日本語の語順で書かれる
②敬語表現が入っている
という特色があります。
「古事記」なども漢式和文であり、漢式和文は平安時代になるとますます頻用される。
★「三代実録」「三代格式」など公式文書は「漢文」ですが、平安時代の貴族の日記は「漢式和文」。
※漢詩集として有名なのは「凌雲集」「経国集」「文華秀麗集」。
<英語は英語のまま読むのに漢文は・・・>
★日本人は漢文を「訓読」することによって、短時間のうちに漢文の内容を吸収しました。
現在でも英語は英語のまま発音してそれを和訳するのに対して、漢文は「日本語読み」にして意味をとらえています。
つまり、高校での漢文の授業は中国語の授業ではなく、漢文を「どうやって学びとるか」という授業をしております。
実は奈良時代以前から日本人はそうしたやり方で漢文を理解していました。
★漢語を漢語のまま読もうとしていた江戸時代と異なり、奈良時代や平安時代は漢語をできるだけ和語に翻訳して訓読しようとしていました。
面白いのは、その「和語」が日常会話と異なるところで、「眼」は「まなこ」と読んでいたことです。
「すべからく・・・」なんていう言い回しも日常会話ではない言葉です。
<「ヲコト点」を経て「カタカナ」が誕生>
★今でこそ「かな文字」がありますが、平安時代は、漢文の訓読に「万葉仮名」を用いていました。
しかし、それでは書き込むのに時間がかかるし、画数の多い万葉仮名を小さく書くと、何を書いているかわからないなどという問題が生じました。
そこで、「ヲコト点」という発明が行われました。
これは、「を」を「・」で表したり、「・」の場所を変えることで「こと」と読ませるような「記号化」のことです。
面白いアイデアではありましたが、すぐに行き詰まった。
★そうこうしているうちに、「万葉仮名」の「一部」だけ書いて済ませる、という方式が生まれました。
「伊」なら「イ」、「礼」なら「レ」と省略するのです。
そう、
これが「カタカナ」のはじまり。
「不完全」という意味から「カタカナ」なのです。
★カタカナの特徴としては最初の画か、最後の画がとられていること。例として「ソ」は「曽」からとられ、「ヌ」は「奴」からとられている。
「ン」は「✔」という符号からきている。
※)ひらがなの「り」は「利」全体をとっているのに対して、カタカナの「リ」は「利」の右側の「りっとう」だけをとっているので、幅が狭い。
<漢字カタカナ交じり文の登場>
★やがて、カタカナが完全に文の中に入ってきます。
平安時代末期の「今昔物語集」などは完全に漢字カナ交じり文。
この時代のものは現代人でもさほど苦労せずに読むことができます。
鎌倉・室町時代になるとカタカナの部分がほとんど漢字と同じ大きさになり、さらにカタカナの部分がひらがなに代わり、現在の漢字かな交じり文へとなります。
<万葉仮名は「草仮名文」を経てひらがなも生む>
★万葉仮名の字体を少し崩した「草仮名文(そうかなぶん)」を経て、「ひらがな」が誕生した。
初期は一音に対して複数の文字が使われていましたが、次第に整理されていきます。
現在の形式になったのは明治33年(1900年)の「小学校令」の時。
いずれにしても、「カタカナ」が漢字の一部をとっているのに対して、「ひらがな」は漢字の「全部」をとっています。(例外は「へ」)
<土左日記からわかること>
★男が漢字、女がひらがな、というのはちょっと違う。紀貫之は「男も書くと聞いている日記を、女の私もしてみようと思って、日記を書く」と言っており、男がひらがなを使わない、とは述べていない。
女性への恋文、和歌などでどうしても必要である。
一方、女性は漢文をあまり読まなかったことから、男性が万葉仮名を書き崩していくうちに自然発生的にひらがなが生まれた、と考える方がスムーズであり、女性がひらがなを発明したわけではないと考えられる。
★ちなみに、もう1つのひらがなの発生ルートとして考えられているのは漢文訓読の場。カタカナとともに、ひらがなも発生。
★また、土左日記は、「ひらがな文」として知られますが、漢字がないわけではありません。冒頭にも「日記」という言葉が漢字で書かれています。
他にも①拗音が入っている漢語、②誤読される危険性のある場合、③見出し語的な語では漢字が使われています。
<ひらがなの功績>
★ひらがなの普及により、物語、日記、随筆といったジャンルが開花しました。字数の少ない和歌などは万葉仮名でも表現できますが、長い散文の文章はひらがながないと難しい。さらに、ひらがなは日常の話し言葉も書ける。
★「源氏物語」はひらがな文に和歌の言葉と手法をとりこんで書くことで、優美な趣を備えた。ただ、
①読みにくい。
②漢語をとりこみにくい。
③論理的に物事を述べるには不向き
などの理由で、漢字カタカナ交じり文が日本語の代表となっていきます。
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