こんにちは。
今回、ご紹介しますのは、「昭和初期と現代の類似点」についてです。
井上寿一先生の「教養としての昭和史集中講義」(2016年)、第1章「昭和初期の人たちは、案外いまの私たちと似た状況にあった」を参考にさせて頂きました。
類似点①:経済の停滞
昭和初期(1926年~)と言うのは慢性的な不況下で労働争議、小作争議が頻発した時代でした。
しかし、不思議なことに「都市化と大衆化が急速に進んだ」という時期でもあったそうです。
不況なのに、「丸ビル(丸の内ビルディング)」が建てられたり、市電・バス・地下鉄などが発達、新聞や雑誌の発行部数も飛躍的に伸び、ラジオ放送(1925年~)や映画も発達・・・
といった様子です。
つまり、全体としては「不況」と言っても、「好況」な部分もあったのでしょうね・・・。
これと同じなのが「現代」。
ピンと来ない人もいるかも知れませんが、バブル以降の現代も総体としては「不況」と言われています。
しかし、大都市に超高層ビルやタワーマンションが建てられ、携帯電話、インターネットなどの通信手段は格段に増え・・・
という状況ですね。
というわけで、「案外、昭和初期の人たちと私たちは似ているのではないか」というわけです。
タワーマンション(当時で言えば同潤会アパート)に入れる人はごくわずか、という点は、現代も昭和初期も一緒ですね。
類似点②:政党の足の引っ張り合い
また、「与党の足を野党が引っ張る」という構図も当時と現代は類似します。
当時、「立憲政友会」「民政党(前身は憲政会)」という二大政党があり、一方が失政すれば他方に政権が移るという(「憲政の常道」と呼ばれます)システムを採用しておりました。
お互いに政策を戦わせているうちは良いのですが、そのうち、何が何でも相手を政権から引きずり落とそうとして「与党のやることは何でも反対」となってしまったのです。
(日本に限らずですが、「二大政党制」の悪しき伝統ですね。)
1つの例としまして、1928年の「パリ不戦条約」。
この時、与党の立憲政友会は賛成していたのですが、野党の憲政会は反対していたのです。
あれ?「幣原喜重郎は協調外交、田中義一は強硬外交」では・・・と思った方もいるかも知れませんが、ちょっとイメージが違いますよね。
民政党は協調外交、立憲政友会は強硬外交、と言われることもありますが、立憲政友会にしても、憲政会にしても、「日露戦争で得た満蒙の利益を守る」という点に関しては一致しておりました。
1927年以前の幣原外交で満蒙の権益が守られたのは中国にまだ統一政権が存在しなかったからで、田中義一が総裁についた1927年以降は蒋介石の北伐が進み、満蒙の権益が危うくなったために、介入せざるを得なかったのです。
それに田中義一とて「パリ不戦条約」に調印するなど欧米と協調しておりましたし、幣原喜重郎とて「南京事件」でイギリスから共同出兵をもちかけられても拒否するなど、何もかも強硬あるいは協調ではありませんでした。
ちなみに現在も野党は与党のやることには何でも文句を言いますね。
コロナ禍での様子を見ていてもわかります。
自民党の方が「リベラル寄り」の政策を出していて、「リベラル寄りのはずの党」がそれを批判していたりと、ねじれを感じます。
今の若者は憲法を変えようとしている自民党を「革新派」と考え、変えようとしない共産党を「保守派」と考えている、ということが紙面に載っていてビックリしたことがありましたが、納得もしました。
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相違点:浜口雄幸の選挙公約
ただ、もちろん相違点もあります。
その1例が浜口雄幸内閣でしょう。
満州某重大事件(張作霖爆殺事件)で政権の座が憲政会に移りました。
そして、浜口内閣は「景気はこれから悪くなります」と宣言しているのにも関わらず、その後の選挙で勝利したのです。
1929.7.2 | 田中義一、「満州某重大事件」の事後処理を巡って昭和天皇から叱責を受け総辞職 | 浜口雄幸、首相就任 |
1930.1.21 | 第17回衆議院議員総選挙で勝利 |
(安達内相の選挙対策が良かったという面、与党は必ず選挙に勝っているという面もあったにせよ。)
選挙時には言いこと言って、選挙後は知らんぷり、ではなく、選挙時から厳しいことを言って勝利したのです。
こういった点は現代も見習うべき点かと思います。
ただ、浜口首相の経済政策は結果として「失敗」でした。
銃撃事件を受けたことで、この経済政策の責任が「曖昧」なまま若槻禮次郎に政権移行してしまった点は問題であったのか、とも思われますがね・・・。
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