こんにちは。
今回ご紹介しますのは、『南朝の真実~忠臣という幻想~』(亀田敏和、2014年、吉川弘文館)です。
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南北朝時代の勉強時に、図書館で見つけました。
実に多くの示唆に富んでおります。
最も紹介したいところは「エピローグ」です。
著者が鹿児島県の「知覧特攻平和会館」を訪れた時の話です。
知覧では、特攻隊員の遺書が多く展示されております。
彼らの遺書は涙を誘うものばかりだったのですが、
室町時代専門家の著者から見ますと、
「彼ら特攻隊員がどれほど楠木正成のことを理解していたのだろうか?」
という疑問でした。
明治時代以降、楠木正成は忠君愛国の代表のような人物として崇められました。
特攻隊員の多くも楠木正成を目標として死にました。
しかし、「楠木正成=忠君愛国」は大いなる「プロパガンダ」で、
本来は実に合理的な考えをもった戦上手です。
「正しい歴史認識と健全な愛国心は、自国の優れた部分を過剰に賛美したりしない。もちろん他国や他民族を誹謗中傷するなど論外である。おだやかで控えめで謙虚である。過度な自虐に陥ることもない。
エピローグp209
そして何より、現実に基づいて立脚した精神が大切である。現実に基づいて過去を正しく反省ないし再評価し、その経験を生かして現在を一生懸命生き、あかるい未来を切り開くのである。(原文ママ)
「南朝史観」と「明治以降の日本」、そして「大東亜戦争」、これらのつながりを考えるうえで、実に勉強になりました。
国家のプロパガンダには引っかかりたくないものですね。