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☞【全家庭必需本?】『図解 世界史で学べ!地政学』(茂木誠、2016年)

こんにちは。

今回ご紹介しますのは、茂木誠先生の「地政学」の本です。

皆さん、「地政学」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

平たく言えば、国家の「地理的要因」を学ぶ学問です。

これは「民族」的なものより上位、と考えます。

戦前は日本も国際政治を志す人にとっては必修だったそうですが、戦後、GHQが廃止してしまいました。

理由は日本の国際感覚を失わせて扱いやすくするためでしょうか。

しかし、混迷する現代においては「地政学」は必要不可欠と思います。

その点、カリスマ世界史講師・茂木誠先生の本書は要点がわかりやすく、1st choiceとして最適と思います。

コチラもすごい:超日本史

もしかすると、結構勉強しているのに近代史を取りこぼしている人は、この地政学的な分野を全く理解していないのかも知れません。

(私は世界史→日本史の順に勉強したので、この不安がありませんでした。)

というわけで、『世界史で学べ! 地政学』(茂木誠)、オススメです。

2019年には文庫本も出版しました。(書籍購入はコチラから

以下、読書メモです。

地政学とは何か

日本が平和憲法を掲げたところで、ソ連は不法占拠をつづけ、シベリア抑留を行い、韓国は竹島を不法占拠し、北朝鮮は拉致を行い、中国は尖閣諸島の領有権を主張している。

「日本やドイツが侵略したから戦争になった。武器を捨てれば平和になれる。」と教わった戦後であるが、実際はどうであろうか。

世界には正義もなく、悪もない。
各国はただただ、生存競争を続けているだけ
この考え方こそがリアリズム。
地政学とは変わらないもの(=地理)を土台として国際情勢を俯瞰する学問である

<主な学者>

ラッフェル(独:地理学者)

国家を1つの生命体とみなし、「今ある国土の中で自給自足出来なければ国土を拡大していくしか手段はない」という大陸系地政学。

ハウスホーファー(独:軍人)

「パン・リージョン構想」。ドイツ、ロシア、日本、アメリカで世界を4分割。日本にも長く滞在。

マハン(米:海軍教官)

アメリカにとって海洋を制覇する必要性を論じる。日本海軍もマハンのシーパワー理論の影響を受けていた。

マッキンダー(英:地理学者)

「ランドパワーとシーパワーのせめぎあいによって世界の歴史が作られてきた」「鉄道の開通で陸上輸送がスピードアップし、これからはランドパワーの時代になる」とイギリスにとってのロシアの脅威を説く。

アメリカ

地政学的に見ると、アメリカは巨大な「島」である。このため、本土の防衛が極めて少なくて済む、という利点はある。

アメリカが西海岸まで拡大するという時、すでにマハンはハワイが日本のものになるかどうかが最大の問題であると指摘。

1897年の時点で、将来的に日本が敵国となる可能性を見抜いていたオレンジ計画はコチラ

マハンの指摘をセオドア・ルーズベルトが実行に移す。ハワイに多くの移民を送り、移民が革命を起こすという手法をとった。

この手法はテキサス併合、ロシアのクリミア併合も同じであり、中国も同じ手法で沖縄の分離を狙っている。

民主主義は帝国主義の野心に利用されることもあるのだ。

マハンの影響は日本にも及んでおり、佐藤鉄太郎はアメリカとの戦争プランを策定した中で、「対米7割の戦艦があれば勝利できる」となった。

この7割を巡って行われた会議が1921年のワシントン会議であり、イギリスがアメリカに同調して結局「6割」になった。【コチラ

また四か国条約(日英仏米)により日英同盟は解消された。

太平洋戦争に突入する最中、オランダ出身のジャーナリスト、スパイクマンは日米開戦の翌年の時点で「大戦後は日本とドイツと手をむすんで、ランドパワーのソ連、中国に対抗すべき」という講演を行っている。

「世界の警察を辞める」宣言をしたアメリカ。「マニフェスト・ディスティニー」と「孤立主義」。相反する2つの顔を持つアメリカの、今後の行方に注目が要る。

♨【国民性についてはコチラも

イギリス

イギリスの欧州における外交は「オフショア(沖合)・バランシング」と呼ばれ、対岸から欧州のバランスをずっと観察していて、欧州統一を実行に移すような国家がでてきたら叩く、というのが基本である。

マッキンダーはどうすればロシアを封じ込めることができるかを研究した結果、「イギリスがロシアの領土に入ることは難しいが、ロシアが地中海、黒海に来るのを防ぐことはできる」と結論。

実際に、イギリスはそれに徹し、クリミア戦争(1853年-1856年)【クリミア戦争は極東でも行われていた】、第2次アフガン戦争(1878-1881年)、日露戦争(1904-1905年)【コチラも】でロシアの膨張を防いだ。

ドイツ

東西両面から攻撃される恐れのあるドイツは必然的にランドパワーの国に。ビスマルクは現実路線をとり、「フランスだけは敵対、ロシア・イギリスは手を結ぶ」方針をとった。

しかし、ヴィルヘルム2世は「ロシアに勝てる陸軍と、イギリスに勝てる海軍を備える」として、中東に植民地を作ろうと考えていた。

現に、ロシアは極東政策の最中、英仏は植民地支配をめぐって対立しておりチャンスと考えていたのだが、イギリスのオフショア・バランスを甘く見ていた。イギリスは急転、ロシア、フランスと三国協商を結び、第1次世界大戦へ。(経済的にもドイツは著しい進歩を見せていた。)

ハウスホーファーは「ドイツの主敵はイギリスとフランスであり、ソ連とは東欧の分割で妥協し、争うべきでない」と言い、副総統ヘス、外務大臣リッベントロップはこの考えのもとで、日独伊三国同盟独ソ不可侵条約を結んだが、ソ連嫌いのヒトラーが対ソ戦を強行したことでリッベントロップと、考えを同じにしていた日本の松岡洋右のプランは崩れ去ってしまった

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第2次世界大戦後は東西陣営の最前線となり、東西に分割。西ドイツが生き残るにはイギリスやフランスと和解し、NATOに入るしかなかった(本心は不服なのか?)。

ロシア

世界最大のランドパワー国。決して奪われることのない陸地(ハートランド)を有する。現在のところ上海協力機構で同盟を結んではいるが、地政学的に中国と友好国になることはない。対アメリカという点では協調しているが、中国が極東への野心を表したら現在の同盟は決裂するであろう。

現在のロシアがウクライナに執着するのは、かつてのキエフ公国が民族発祥の地であるということもある。モンゴルが去った後はポーランドのヤケヴォ朝の支配下にあったが、勢力を伸ばしたモスクワ大公国との争いの末、東西で分割。ウクライナ西部はポーランドの影響を受け、今も親西欧感情があり、東部は親ロシア感情が強い。ウクライナの東西対立は既にこの時点から始まっている

その後、ロシア帝国のエカチェリーナにより、ロシアの勢力が拡大。ロシア帝国崩壊時にポーランドは独立を回復するが、今度はソ連共産党が侵入し、ソ連の一部となり、現在はロシアの支配下に。ただ、ウクライナ人はスターリン時代の失政により1000万人とも言われる餓死者が出たことに強い増悪を持っており、反ロシア感情は強い

その後、親欧米政権誕生、EU加盟手続き→プーチンによる天然ガス供給停止→親ロシア政権→反対運動で大統領亡命→親欧米政権→クリミアで住民投票し、ウクライナから独立、ロシア連邦加盟。クリミアには黒海艦隊の拠点という軍事上の要衝であるセヴァストーポリがあり、ここにアメリカ軍(NATO軍)が来ればロシアにとって脅威であるための「クリミア併合」である

プーチンは自由より秩序と公正を重視する「ユーラシア国家」を目指しており、個人主義を重視する西欧とは基軸が異なる。この中で西端はドイツ、東端は日本である。ドイツの繁栄を地下資源で支えたのはロシアであり、ドイツとは経済的に蜜月が続いているが、アメリカは快く思っていない

日本とは北方領土の問題があるが、これは日本の背後にアメリカがあり、北方領土にアメリカ軍基地をおかれたらどうしようもないからである。日本が対米従属を続ける限り、4島一括返還は難しいであろう。

日露の接近はアメリカ、中国が快く思っておらず、この点で米中の利害は一致する。ちなみに日本とはまだ平和条約が結ばれていない。

中国

近年、中国は「元のフビライ・ハンも、清のヌルハチも中国人」という歴史教育を行い、歴史のすり替えを行っている。中華思想は「四夷を開花する」ことであり、これにより際限なき膨張と少数民族への抑圧をも正当化する。周辺民族との果てしない戦いの歴史ののち、周辺民族を買収して懐柔することを身につけた。

現在は、北京に本部を置くアジアインフラ投資銀行(AIIB)がそれにあたる。

ただ、北狄と西戎の脅威は永遠に続いており、現在では北のロシア、西のチベット人・ウイグル人がそれにあたる

従来、シーパワーは無視し続けてきたが、アヘン戦争時のイギリス、日清戦争時の日本、と海外のシーパワーに圧倒される結果となった。

1689年:ネルチンスク条約(鄭成功の乱、三藩の乱で江南に対応している最中に、ロシアが満州に侵入)

1696年:外モンゴルを藩部とする。

1720年:チベットを藩部とする。

1755年、最後の遊牧帝国と呼ばれたジュンガルを滅ぼし、新疆とする。(しかし、これはロシアと国境を接することをも意味した。)

1840年:アヘン戦争

1856年:アロー戦争

1874年:日本の台湾出兵

1875年:朝鮮開国につながる江華島事件

1894年:日清戦争【コチラも

1911年:辛亥革命で外モンゴルは独立、チベットも独立。

1947年:インドの独立に伴いイギリス軍はチベットから手を引く。

1949年:中華人民共和国建国。

1949年:ウイグル併合。

1950年:チベット侵攻。その後も独立運動を弾圧している(1959、1989、2008)。

1950年:朝鮮戦争介入

1955年:アジア・アフリカ会議。ネルー、周恩来ら。インドネシアのバンドン。

1956年:中ソ大論争

1959年:チベット独立運動弾圧でダライ・ラマ14世がインドへ亡命。

1962年:インドと国境紛争

1964年:ソ連に対抗して核実験

1967年:水爆実験成功

1969年:ダマンスキー島事件

1971年:中国の国連代表権承認。ベトナム戦争の泥沼化に苦しんでいたニクソン政権は中国と結ぶことでベトナムに圧力。アメリカ財界の中国進出。

1979年:中越戦争

1991年:ソ連解体。ソ連は鄧小平のような経済政策を行おうとするも失敗。北の圧力軽減。

フィリピン・台湾

フィリピンは400年間、スペイン領であったが、1898年の米西戦争後のパリ条約でアメリカ領に。

これはマハンの提言、「太平洋上のハワイとフィリピンに米軍基地を建設せよ」を忠実に実現したものである。

その後、独立を宣言したフィリピンとの間で米比戦争がおき、弾圧。フィリピンをアメリカから解放したのは日本であり、1941年、独立するも、再び米軍が奪還。日米両軍の戦闘で戦場となり、100万人以上のフィリピン人が犠牲になった。

2度の戦争で反米感情があり、ついに1986年、親米マルコス政権が転覆。コラソン・アキノを大統領とする新政府は米軍撤退、基地返還を求め、冷戦終結、ピナツボ火山の影響もあり米軍が撤退した直後から、中国が南沙諸島を占拠し始めた。(沖縄から米軍基地が撤退したらどうなるかというと、こうなる。)

ペニグノ・アキノ大統領は米軍復帰、日本の援助歓迎を明言するも、2016年に大統領になったドゥテルテ大統領は軍事協定を無効とし、反米主義を前面に。習近平との会談では南シナ海の領土問題を棚上げする代わりに経済援助を取り付ける。

日本には「アメリカはこれまでフィリピンをイヌのように扱ってきた。日本とは協力できるが、アメリカとは無理だ」という誰も言えなかった本音を吐露。国内では熱狂的支持を受ける。ただ、中国は明らかにフィリピンの属国化を狙っており、ここに海軍基地が置かれたら念願の第一列島線が突破されてしまう

フィリピンと共に南シナ海にフタの役割をしているのが台湾であるが、台湾の立場も微妙である

現在、総輸出額の4割が中国と香港であり、多くの企業が中国に進出しており、中国なしで成り立たないのが台湾経済である。しかし、中国になったら現在享受している自由はなくなる。

現在、台湾は国民党と民進党の2大政党による民主主義国家である。台湾に米軍はいないが、その役割を代行しているのが沖縄である

台湾はなぜ親日なのか?コチラ

朝鮮半島

古代の新羅、中世の高麗、14世紀から600年続いた李氏朝鮮と、この半島に興った国家は、強国から攻撃されるか、強国の庇護を受けるかしかなかった。このあたりが日本と対照的であり、国民性の違いの説明にもなる

民族最大の危機は13世紀のモンゴル侵攻であり、最初は抵抗していたものの、最終的には完全に属国となった。このような中で即位した忠烈王は、義父となったフビライに取り入るために日本侵略を提言。これが元寇である。このように強大な支配者に同化して生き延びることが事大主義と呼ばれる。

大陸で明が成立すると、半島では李成桂が高麗を倒し、明朝に冊封を受ける。朱子学を軸とし、高麗時代に国教であった仏教は弾圧された。悪名高い官僚階級の両班もこの時代であり、中国人のように漢文をマスターした。清に攻め込まれ服従させられ、中国も清となると、自分たちこそ正当な中華文明の継承者であるという「小中華思想」となる。

清が朝鮮に迫った時、親清派と親明派に分裂。モンゴルが迫った時の高麗もそうであり、李氏朝鮮末期に日本が迫った時もそうであった。日本から独立する際にも親ソ派、親米派で分かれ、朝鮮戦争となっている。このような姿勢は半島の地政学的条件とそれによって形成された民族性があるので永遠に変わらないであろう

2012年8月、李明博大統領の「天皇は謝罪すべき」発言で、日韓の亀裂は決定的に。しかし、このような反日は昔から行われており、特に、国民の不満をそらすために行われてきた。朴正煕時代の1965年、日韓基本条約で韓国経済が復興したことなど過去のものである。実際の日本統治時代を知らず、国定教科書で反日を叩きこまれた世代が主流になり、反日は増長している

北朝鮮の対韓工作は大韓航空機爆破事件以降、現在も継続中である。北朝鮮としては日韓を分断したい。「慰安婦問題」を拡散している一部の団体は北朝鮮とつながっているし、金大中、盧武鉉政権下で北朝鮮は政権内部まで浸透した

IMF危機以降に政権を握った金大中は「反米・親北」を掲げるが、彼は全羅道の荷衣島出身である。この全羅道出身者は百済出身ということで何かと差別を受けてきた。1948年の済州島にける四三事件(vs李承晩)、1980年の光州事件(vs全斗煥)などがその例である。済州島出身者は日本でコリアン居住地を築くが、これも日本のせいにして、自国の暗黒史を隠ぺいしようとしている。金大中からみれば全羅道の敵(慶尚道)の敵(北朝鮮)は味方、という論理から太陽政策を実施するも、この時の資金が北の核ミサイル開発に用いられてしまっている。

アメリカ離れとともに接近してきたのが中国であるが、「日本を懲らしめて謝罪させたい」とする韓国と、「あくまでも韓国を日米から離反させたい」中国とでは目的がちょっとずれている。朴クネはリアリストであった父とは正反対。中国の抗日戦勝70周年パレードに西側首脳として1人だけ出席するほか、ハルビン駅にテロリストである安重根の記念館を建設すると習近平に約束させるなどしており、アメリカも苛立っている。アメリカの本音は韓国の面倒は日本に見てもらうことであり、韓国防衛の重荷から解消されたい。その最後通牒が地上配置型迎撃ミサイル(THAAD)であろう。強い国についていくのが韓国であるが、2015年以降、中国経済が失速。トランプは「韓国の面倒は見ない」と公言、日本は反日のやりすぎで助けてくれそうになく、今後の展開が注目される。

あわせて読みたい:日韓併合の真実

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