~只今、全面改訂中~

☞【室町時代を知るにはコレ!】『戦争の中世史~下剋上は本当にあったのか』(呉座勇一、2014年)

こんにちは。

今回ご紹介しますのは、呉座勇一先生の「戦争の中世史~下剋上は本当にあったのか」です。

私が中世史に興味を持つようになったきっかけの本でもあります。

鎌倉時代後期~応仁の乱までをハイレベルで網羅しておりますので、受験対策としてもバッチリだと思いました。

【読書メモはコチラ】

面白いのは「応仁の乱」だけではない!

呉座先生と言えば、「応仁の乱」(2016年、中公新書)の方が有名かも知れません。

しかし、「最も伝えたい」本はこっちではないかと勝手に思っています。

 

本書の構成は、第1章「蒙古襲来」、第2章が「悪党」の時代、第3章~5章が「南北朝内乱」、第6章が「南北朝内乱後」で、終章に「応仁の乱までの経過」となっています。

つまり200年近くも網羅しているんですよ!

第2章:「悪党」の時代より

いくつか面白い部分を紹介します。

鎌倉幕府滅亡の原因は何か。この難問に対する日本中世史学会の最新の回答をお教えしよう。ズバリ「わからない」である。
 

「戦争の日本中世史」p97-98

研究が進めば進むほど、仮説が成り立たないと言うんですって。

北条専制支配に対する反感は多くの人が抱いていたにせよ、それと倒幕が結びつかないと言うのが学者の意見。

※北条専制支配に対する「冷遇された者たちによる反乱」という「階級闘争史観」はいかにも古い。そして甘い。

小中学生向けのものには「蒙古襲来で頑張ったにも関わらず恩賞がもらえずに不満がたまったから」とあったりもしますが、そんな浅い理由ではないんだそうです。

そもそも複雑な経過を経て起きる事象が簡単に説明できるはずなどないですよね。

楠木正成は「悪党」ではない

さらに、これまでは楠木正成や赤松円心は「悪党」(=「御家人ではない新興の武士」)とされていましたが、

近年の研究では楠木正成は御内人、赤松円心も六波羅探題配下の御家人であった
 

「戦争の日本中世史p99

ことがわかったといいます。

うーん、これでだいぶイメージ変わりますね。

実は「悪党」の時代ではない

さらに、呉座先生によれば、この鎌倉後期~南北朝期は、「悪党の時代」ではなく、

「有徳人(うとくにん)の時代」。

有徳人=金持ちのことですが、この時代は「貨幣流通が活発化し、年貢の代銭納制が成立した時代(テストで頻出)」で有徳人が出現したことが特徴といいます。

1220年代の金王朝支配下の北中国、つづいて1270年代のモンゴル帝国支配下の江南において、紙幣流通を促進させる目的で「銅銭禁止政策」が推進されたことが影響しているんですよね。

鎌倉・室町時代、面白いですよね!

追記

【追記】呉座先生は最近、「俗流歴史本論争」でちょっと有名。論争そのものは面白いのですが、そんなことよりも本書を読んで欲しいです。(2019/7/17)

【追記】やはり最も味わい深い文章は終章の「平和はきれいか」の項【読書メモはコチラ】。何度読み返しても重要。完璧な平和など追い求めるものではない。かつてサッチャー首相は政治に最も必要なものとして、しばし熟考した後、「健全な(?)敵対勢力」と答えたという話を新聞で読んだことがあるが、そういうことである。適切な勢力均衡を保つことがいかに大事か。畠山満家を見習うべし。(2019/8/14)

【追記】出張先でテレビをつけたら、たまたま「歴史ヒストリア」で「最新研究日野富子」をやっており、呉座先生が登場。これはめちゃくちゃ面白かった。永正の錯乱後、かつて明応の政変で争った畠山家と細川家を結びつけるために「応仁記」が書かれて日野富子が悪役にされてしまった、という。(2019/09/18)

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